| 骨肉腫のカフェイン併用治療 |
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石川県の5歳男児は、右腕の上腕部の痛みと腫れがきっかけで、骨のがん「骨肉腫(しゅ)」が見つかった。骨が破壊されるほど進行しており、金沢大病院で手術を受けることになった。手術に先立ち、抗がん剤と、その効果を増強させるカフェインを併用する治療を受けたところ、画像診断で、腫瘍(しゅよう)が消失していることが確認された。従来なら、がん細胞を残さないよう肩関節部分の切除が必要だったが、切らずに済んだ。上腕部のみを切除、そこに足の骨(ひ骨)を移植し、5か月後、右腕は元通り動くようになった。(科学部・藤田勝)
骨肉腫は、思春期の子供に多い病気で、大腿(だいたい)骨や上腕骨にできやすい。腫瘍によって内部が破壊された骨は、切除しなくてならない。
1970年代までの治療は、腫瘍ができた手足の切断が主流で、5年生存率も10〜20%と低かった。
80年代以降は、抗がん剤で腫瘍を小さくしてから手術することにより、手足の切断の回避を目指すようになった。こうした手足の温存手術は骨肉腫手術の9割を超え、肺、肝臓などへの転移がない場合、5年生存率も60%程度に上昇した。
だが、抗がん剤だけで腫瘍を死滅させることは難しい。そこで、抗がん剤の効き目を強くするため、金沢大整形外科助教授の土屋弘行さんは、意外な物質に着目した。コーヒーなどに含まれるカフェインだ。「カフェインは紫外線や放射線による細胞障害を進行させる」との報告を読んだことがヒントになった。
抗がん剤でDNAを傷つけられたがん細胞は、次の細胞分裂までの周期を延ばすことでDNAを修復し、生き延びようとする。ところが、そこにカフェインを投与すると、がん細胞は修復までの十分な時間を確保できず、傷ついたまま分裂し、死ぬことを動物実験などで確認した。
そのうえで、土屋さんらは89年、骨肉腫の患者に抗がん剤とカフェインの併用療法を開始。血液中に抗がん剤2種類(シスプラチンとアドリアマイシン)を4時間注入した後、カフェインを3日間、点滴注射する。患者の体力を見ながら、この併用治療を手術前に5回、手術後に6回繰り返すのが標準的な方法だ。
カフェインの量は1日2〜3グラム。コーヒー30杯分程度と多いが、不眠や吐き気などの副作用は、血中濃度の調整や鎮静剤で抑える。
これまで60人に併用療法を行い、他臓器に転移がない36人中30人は、手術前に腫瘍が消えた。従来の成績と単純には比較できないものの、5年生存率は93%と高い。一方、転移が起きた場合の生存率は従来同様に低く、今後の課題だ。
併用療法は、切除範囲を従来より小さくできる。関節や周りの筋肉、神経などを残し、切除した部分に別の骨を移植して再建することで、運動機能回復も容易になった。
土屋さんは「手足の機能が回復する意義は大きい。ただし、カフェインはあくまで抗がん剤の補助剤で、コーヒーを多く飲んでも効果は期待できない」と説明する。
同大((電)076・265・2000)の併用療法は2003年、検査など治療本体以外の部分に保険がきく高度先進医療に指定された。カフェインは安く、患者の自己負担は3日分で9500円程度。
同大以外にも骨肉腫などに併用療法は広まりつつある。米国では、悪性黒色腫、脳腫瘍、すい臓がんの治療などにも応用されている。
カフェイン併用の化学 療法に取り組む主な病院 千葉県がんセンター(千葉市) (電)043・264・5431 石川県立中央病院(金沢市) (電)076・237・8211 福井大病院(福井県松岡町) (電)0776・61・3111 広島県立広島病院(広島市) (電)082・254・1818
(2005年12月5日 読売新聞)
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テーマ:医療・健康 - ジャンル:ニュース
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